多くの労働関係法規が存在する現在において、雇用する従業員との間で労働問題を一切生じさせないということは困難といわざるを得ません。

企業活動を行う上で使用者は本業だけでなく、従業員との間に労働問題が生じた場合の対応について前もって準備をしておく必要があります。

従業員との間で生じる労働問題

従業員との労働問題は雇用契約の各段階に隠れています。

ここでは従業員との間で生じる主たる労働問題について、その内容を確認してみます。

採用内定・内定取消し

使用者が従業員の募集を行い、選抜の結果として特定の応募者に対して雇用の意思を伝えることを採用内定といいます。

採用内定の時点では採用内定を受けた者はまだ正式に入社していませんが、採用内定の時点で、使用者と採用内定を受けた者との間には雇用契約が成立しています。

内定取消しは、使用者が採用内定者に対して雇用しないという意思を伝えるものですが、採用内定時に採用内定者との雇用契約が成立しているため、法的には、使用者が採用内定者を解雇したという扱いになります。

労働条件の決定・変更

使用者は従業員との間で雇用契約を締結するにあたり労働条件を決定しますが、労働条件はそれぞれの労働関係法規に適合するものである必要があります。

本来、従業員の労働条件については網羅的に雇用契約書に記載すべきものですが、細かい労働条件のすべてを雇用契約書に盛り込むことは現実的ではないため、一律の適用が予定される労働条件については就業規則に記載することになります。

就業規則を変更することで個々の従業員の労働条件を変更することがあり得ますが、従業員の労働条件を不利益に変更しようとする場合には、変更後の就業規則の内容の合理性などが要求されます。

人事権行使

適切な人員配置のために従業員に異動を命じるなどの人事権の行使には使用者に相当程度広範な裁量が認められています。

しかし、人事権の行使といっても無制限に許されるわけではなく、前提となる業務上の必要性がない、ある従業員を退職させることを真の狙いとしているなど不当な目的に基づくものである、従業員に大きな不利益をもたらす一方で業務上の効果は僅かであるなど一般的に考えて著しく妥当性を欠くといった事情が存在する場合にはその効力が否定されることがあります。

残業代

労働基準法の定めを超えて従業員を働かせる場合には36協定の締結や残業代の支払いが必要となりますが、従業員の労働時間管理が不適切である、残業時間の計算に問題があるなどの理由で残業代が未払いになっている場合があります。

また、給与費目の定め方や固定残業代の導入によって使用者と従業員との間で残業代の計算方法について認識の相違が生じる可能性があります。

ハラスメント

複数の従業員を雇用する場合、従業員間でセクハラやパワハラといったハラスメントの問題が生じる可能性があります。

ハラスメントを確認した場合、使用者として事実関係の調査を行い、同様のハラスメントが発生しないよう適切な処理を講じる必要があります。

ハラスメント被害を受けた従業員から使用者の安全配慮義務違反を追求される場合もあり得ます。

懲戒処分

従業員の服務規律違反や非違行為に対して使用者が制裁を与える手段として懲戒処分があります。

懲戒処分は、戒告、減給、出勤停止、降格、懲戒解雇などの種類がありますが、使用者が懲戒処分を行うためには、従業員について懲戒処分に値する客観的合理的な理由が存在すること、使用者が選択する懲戒処分が従業員の行為に対応する処分として適切なものであることが要求されます。

使用者は従業員の服務規律違反等行為の性質に応じて適切な懲戒処分を選択する必要があり、懲戒処分の有効性の判断においては使用者が懲戒処分を下すに至る手続が適正に行われたかという観点も問題となり得ます。

解雇

従業員の問題行動に改善が認められない等の場合、使用者として当該従業員の解雇を検討せざるを得ない場合があります。

使用者が従業員を解雇する場合、従業員について解雇に該当する客観的合意的な理由が存在すること、当該理由に対して解雇という最終手段で対応することが社会的に相当であることという要件を満たす必要があります。

解雇は従業員の生活の糧を一方的に奪う手段であるため、その有効性要件は厳格なものとなっています。

労働問題への対応

労働問題への対応は事前の対応と事後の対応に分かれます。

事後の対応は従業員との労働問題が実際に生じた後にどのように対応するかという問題ですが、従業員は労働関係法規により厚く保護されているため、実際に労働問題が生じた後に使用者側の言い分が全面的に認められるということは多くありません。

使用者と従業員の言い分が食い違う場合には裁判所手続にまで発展する可能性があり、その場合には解決まで多くの時間と多くの資源(関係する従業員の協力、資料の提出)を投入する必要があります。

そのため、使用者にとってより重要なのは、従業員との労働問題が生じる前の段階で将来の紛争を回避するための事前の対応ということになります。

予防的な対応には手間がかかりますが、実際に労働問題が発生した場合のデメリットを回避もしくは低減するためには手間を惜しむべきではありません。

事前の対応として、具体的には、以下のような取組みが考えられます。

労働問題は従業員の労働条件を巡って生じることが多いため、労働条件を規定する雇用契約書や就業規則については定期的に見直す必要があります。

問題行動を起こす従業員に関しては見過ごせなくなってから行動するのではなく、問題行動の都度、注意・指導を与え、場合によっては懲戒処分を行い、将来的な解雇等の準備を整える必要があります。

賃金体系を整理し、残業代の支払いに疑義が生じないよう通常の賃金と残業代の区別を明確にしておく必要があります。

ハラスメントが発生しない職場作りのため、定期的なハラスメント防止研修の実施やハラスメント相談窓口の設置を行います。

労働問題に強い弁護士

弁護士はあらゆる法律問題に対応することができますが、すべての弁護士が労働問題に強いわけではありません。

ある弁護士が特定の分野に強いかどうかは当該特定の分野の事件処理にどの程度の時間をかけてきたかによります。

そこから、使用者側の労働問題に強い弁護士とは、使用者側の立場から多くの労働問題を解決に導いてきた弁護士ということがいえます。

また、労働問題の事前の対応については就業規則等の整備が重要となってくるため、数多くの就業規則の整備の経験がある社会保険労務士との協力関係があればより効率的に対応を進めることができます。

弊所グリーンリーフ法律事務所は、現在160社以上の企業様と顧問契約を締結しており、日々、従業員との間で生じた労働問題を含むご相談などに対応しているため、使用者側の労働問題に対する経験の蓄積には自信をもっています。

また、社会保険労務士を含む士業とのネットワークを保有しているため、規則の改定などのご要望にも幅広く対応することができます。

埼玉で労働問題に強い弁護士をお探しの企業様がございましたら、まずは一度お気軽にご相談ください。

顧問契約の締結のみならずスポットでのご相談・ご依頼にも対応しておりますので、ご検討をよろしくお願いします。

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グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、17名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 企業が直面する様々な法律問題については、各分野を専門に担当する弁護士が対応し、契約書の添削も特定の弁護士が行います。まずは、一度お気軽にご相談ください。 また、企業法務を得意とする法律事務所をお探しの場合、ぜひ、当事務所との顧問契約をご検討ください。

■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 吉田 竜二

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