労働条件の変更の原則

労働条件は、雇用契約の根幹をなすものですから、雇用契約によって規定されています。従って、労働条件を変更するには、労働者と使用者の合意が必要となるのが原則です(労働契約法第8条)。

強行法規・就業規則との関係

ただし、労働者と合意した場合であっても、強行法規である労働基準法に違反する場合には、その変更は有効にはなりません(労働基準法第13条)。
また、就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その達しない部分については無効となり、無効となった部分は就業規則で定める基準によるとされていますので(労働契約法第12条・労働基準法93条)、就業規則よりも下回る労働条件とすることはできません。

就業規則の不利益変更(1)

使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を労働者の不利益に変更することはできないのが原則です(労働契約法第9条)。
また、労働者との合意があっても、就業規則の不利益変更には、一定程度の合理性と、適正な手続きが必要であると解釈されています。

就業規則の不利益変更(2)

(1)上記のとおり、使用者は、労働者と合意することなく就業規則を労働者の不利益に変更することはできませんが、
 ①変更後の就業規則を労働者に周知させること
 ②就業規則の変更が合理的であること
の2つの条件を充足する場合には、労働者と合意をすることなく就業規則を労働者に不利益に変更することも認められています。

そして、上記②就業規則変更の合理性は、
・労働者の受ける不利益の程度
・労働条件の変更の必要性
・変更後の就業規則の内容の相当性
・労働組合等との交渉の状況
・その他の就業規則の変更に係る事情
に照らして判断されることになります。

また、「特に、賃金、退職金など労働者にとって重要な権利、労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の作成または変更については、その条項が、そのような不利益を労働者に法的に受任させることを許容できるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合において、その効力を生ずるものというべきである」(第四銀行事件・最高裁平成9年2月28日判決他)とされており、賃金、退職金の減額などの場合や、賃金体系の不利益変更により賃金減額などの不利益の可能性がある場合などについては、不利益変更ととらえ、高度の必要性を要件とする裁判例が多いとされています。

(2)不利益変更の具体例
ア 合理性ありとしたもの
 ①大曲市農協事件(最高裁昭和63年2月16日判決)
  7つの農協が合併して設立された農協が作成した退職給与規程において、旧規定に比べて支給率を下げたことについて、合併に伴う格差是正などを検討し、不利益変更を有効としました。

 ②第四銀行事件(最高裁平成9年2月28日判決)
  55歳から60歳への定年延長と55歳以降の賃金減額を実施したことについて、人件費の増加や収益などを検討し、55歳以降の賃金減額の不利益変更を有効としました。

イ 合理性なしとしたもの
 ①みちのく銀行事件(最高裁平成12年9月7日判決)
  多数労働組合との協議を経て、55歳以上の行員の賃金を減額した就業規則変更について、就業規則変更の必要性は認めたものの、変更後の不利益の程度が大きいこと等を理由に、不利益変更を無効としました。

労働協約による不利益変更

労働協約による労働条件の不利益変更は、労働協約に定める基準が全体として不合理な場合や、労働協約が特定の又は一部の組合員をことさらに不利益に扱うことを目的とするような場合でない限り、有効になるとされています(朝日火災海上保険事件・最高裁平成9年3月27日判決)。
また、労働協約に一般的拘束力(非組合員へも効力が及ぶ場合)が認められる場合には、非組合員に対しても、労働協約による不利益変更の効力が及ぶのが原則となるとされています(朝日火災海上保険事件・最高裁平成8年3月26日判決)。

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