紛争の内容
ご依頼者様は製造業を営む企業でしたが、ある従業員が会社の上司等からパワハラを受けたとして、2年近く休職しており、その従業員の処遇について検討されていました。
当該従業員は、パワハラを主張するとともに、代理人弁護士を依頼し、数十ページにわたる書面で、当事者からの謝罪や職場環境の改善等を要求していました。
ご依頼者(会社)は、当該従業員の退職を希望されていましたので、退職に向けて交渉を進めることとなりました。

交渉・調停・訴訟等の経過
相手方従業員から、パワハラの有無等について事実調査を行うよう要求がなされましたので、会社内調査を行うこととし、調査委員会を立ち上げ、関係者を対象に事実関係についてヒアリングを行いました。
ヒアリングの結果、相手方従業員の主張する事実は認められない又はパワハラには該当しないという結論となり、調査報告書にまとめ、その内容を先方に伝えました。
会社としては、パワハラについて謝罪をする意向はなく、職場環境の改善等の措置をとる予定もないということでしたので、相手方の主張を争うという姿勢で交渉に臨みました。
代理人同士でやり取りする中で、相手方従業員の休職期間が長期間となっていたため、話を前に進めるために、当方から退職勧奨を行い、退職について話を行いました。
先方も、本件がかなり長期化していたため、退職自体には応じる意向を示し、退職に向けた話をする中で、先方が解決金として金銭的請求を行ってきたため、当方にて支払うことのできる金額について検討を行いました。

本事例の結末
先方が退職することで合意でき、解決金については、およそ100万円を当方が支払うということで合意ができました。
先方が主張していたパワハラについては、双方の間で最後まで争いがあったため、直接的にパワハラとは記載せず、パワハラにあたり得る事由及び双方がそれについて認識している旨を合意書に明記するということで合意ができました。
そして、無事、解決金の支払、従業員の退職が完了し、事件終了とすることができました。

本事例に学ぶこと
本件は、相手方従業員が長期間休職し、かつ、パワハラについて強く主張しており、ご依頼者様も対応に苦慮し、解決を図ることが難しい事案でした。
前提として、パワハラの有無について双方の認識が異なっていましたので、容易に解決を図ることはできない事案でした。
しかし、そのような事案であっても、相手方の主張を詳細に分析し、当方の主張を正確に伝えた上で、粘り強く交渉を続ければ、ご依頼者様の希望される解決を図ることができることを学びました。

弁護士  時田剛志
弁護士 権田健一郎