紛争の内容
顧問先の会社オーナー兼現代表取締役からのご相談でした。

相談の概要は、元代表取締役を解任したところ、「解任の正当な理由がない」として、「少なくとも残任期中に受け取れるはずだった役員報酬を支払え」ということを言われているとのことでした。
元代表取締役は新規の顧客開拓もせず、仕事をしていないというのがオーナーのご主張でした。

問題は、元代表取締役が、解任される前後に、会社が金融機関から無利子貸し付けを受け、その大部分を持ち出してしまったということでした。
元代表取締役の言い分は「報酬請求権を担保するため」とのことですが、あくまで会社の財産と代表者の財産は別であり、このように自力救済的に持ち出して返還しないことは、横領(自己の占有する他人の物を領得する行為)の疑いすらある行為です。

そのため、両者の主張は、

元代表取締役:報酬を支払え
会社:会社のお金を返せ

ということで平行線を辿り、民事訴訟に発展することとなりました。

交渉・調停・訴訟等の経過
訴訟の中では、それぞれが訴えを起こし(一方は「反訴」という形)、以下の争点に集約されました。
①解任に正当な理由があるかどうか
②ない場合には損害の範囲はどうなるか(残任期全体か一部か)
③会社の財産を返さないのは横領に当たるか

①については、③と密接に関連しており、横領に当たるのであれば、客観的にみて、解任に正当な理由はあるということになります。
裁判の中では、双方が自身のよって立つ立場に関する文献などを出し合い、お互いの主張の有効性を主張・立証し合いました。

しかし、③については、たとえ報酬確保目的としても、適法な差押などを踏まれた手続ではなく、会社の返済なども迫っていたこともあって、裁判所は、会社寄りの見解に立ち、会社側に優位な和解案を提示することになりました。

本事例の結末
結論としては、裁判上の和解による解決が図られました。
1年強の役員報酬に相当する金額を元代表取締役の手元に残すことを許容し、残りを全額会社に返還する内容です。

本事例に学ぶこと
会社法に関する争いを得意とする弁護士がグリーンリーフ法律事務所にはおります。
それ以外、様々な法律を専門とする弁護士が結集しており、顧問先様のあらゆる法的トラブルに対し、交渉・調停・訴訟までサポートすることが可能ですので、今回のように熾烈な争うがある場合にも、遠慮なくご相談いただけたらと思います。

今回も、訴訟において丁寧に主張・立証していなければ、別の結論になっていた可能性もあり、会社にとっては死活問題でした。会社の訴訟では、金額が大きい場合も多々ありますので、弁護士選びは慎重になさってください。

弁護士 森田茂夫

弁護士 時田剛志