
先に使用者に対してカスハラ対策を義務づける改正法(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律)が成立したという内容をご紹介いたしました。
その後、厚生労働省から使用者が対応すべきカスハラ対策の指針の素案が示されましたので、今回はその内容について解説をしていきます。
カスハラとは?

カスハラはカスタマーハラスメントという言葉を省略した用語ですが、店舗等を利用する顧客等が店舗等で働く従業員に対して行う迷惑行為のことを指します。
改正法上、カスハラは「職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う業務に関係を有する者の言動であって、その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより当該労働者の就業環境が害されること」と定義されています。
指針素案では上記の定義に関する以下の掘り下げが行われています。
「職場」について、雇用する従業員が業務を遂行する場所を指しますが、取引先の事務所、取引先と打合せを行うための飲食店、顧客の事務所等も該当するとしています。
「顧客等」の具体例として、商品の購入者、サービスの利用者、広告等の内容について問い合わせをする者、取引先の担当者、施設の利用者、施設の近隣住民等があげられています。
「カスハラ行為」の具体例として、性的要求、プライバシー情報の要求、契約内容を逸脱したサービスの要求、著しい価格の減額要求、商品やサービスとは関係のない不当な損害賠償要求、殴る・蹴る、物を投げつける、ぶつかる、悪評をSNSに投稿することをほのめかして脅迫する、人格否定発言、土下座の強要、盗撮、アウティング、大声を出す、不必要な質問を繰り返す、長時間の居座り、長時間の電話等があげられています。
「労働者の就業環境が害される」という点について、顧客等の言動により従業員が身体的・精神的苦痛を与えられ、就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど従業員が就業する上で看過できない程度の支障が生じる状態を指し、その判断にあたっては平均的な従業員の感じ方を基準として判断するとしています。
使用者に求められる対応

改正法において使用者は、職場におけるカスハラを行ってはならないことその他職場におけるカスハラに起因する問題に対するその雇用する従業員の関心と理解を深めるとともに、従業員が他の使用者が雇用する従業員に対する言動に必要は注意を払うよう、研修の実施のその他の必要な配慮をするほか、国の講ずる広報活動、啓蒙活動その他の措置に協力するよう、また、自らもカスハラ問題に対する関心と理解を深め、他の使用者が雇用する従業員に対する言動に必要な注意を払うよう努めなければならないと定められています。
指針素案が触れる使用者側が講ずべき措置は以下のとおりです。
使用者の方針等の明確化及びその周知・啓蒙
・職場におけるカスハラには毅然とした態度で対応し、従業員を保護する旨の方針を明確化し、管理者を含む従業員に周知・啓発する。
具体的には、社内報、パンフレット、社内ホームページ等に上記を記載し従業員に配布等を行う、職場におけるカスハラ対策の研修・講習を実施する。
・職場におけるカスハラの内容及びあらかじめ定めた職場におけるカスハラ対処の内容を管理者を含む従業員に周知する。
具体的には、管理者へ速やかに報告し指示を仰ぐ、従業員一人で対応しない、顧客等とのやり取りを録音等で記録化する、対応が一定時間を経過した場合には退店を求める、暴行等については警察へ通報する、現場では対応が困難な場合は本社等へ情報共有を行う、法的対応が必要となる場合には弁護士等に相談する、それらの内容をマニュアル化し従業員に周知し研修・講習を行う。
顧客等からの相談・苦情に応じて適切に対応するために必要な体制の整備
・相談窓口をあらかじめ定め、従業員に周知する。
具体的には、相談対応担当者をあらかじめ定める、相談に対応する制度を構築する、外部機関に相談窓口を委託する。
・相談窓口の担当者が相談や苦情に対して、その内容や状況に応じて適切に対応できるようにする。
具体的には、相談窓口の担当者が相談を受けた場合、その内容に応じて関係部門と連携を図ることができる仕組み作りをする、相談時の留意点などを記載したマニュアルを作成する、相談担当の従業員に対して相談時の対応に関する研修を実施する。
職場におけるカスハラに係る事後の迅速かつ適切な対応

・事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認する。
具体的には、管理者がその場で事実確認を行い対応する、相談窓口の担当者や関係部門の担当者が相談者から事実関係を確認する、迅速な確認が困難な場合には調停申請や中立な第三者機関に紛争処理を委ねる。
・職場におけるカスハラが確認された場合、速やかに被害者に対する配慮措置を適正に行うこと
具体的には、管理者が被害者に代わり対応することで当事者を引き離す、暴行等がある場合には警察に通報する、担当者変更を行ったり複数人で対応するようにする、状況により配置転換等を利用することもあり得る、調停や第三者機関の紛争解決案に沿った措置を被害者に対して講ずる。
・改めて職場におけるカスハラ方針を周知・啓発し、必要に応じて再発防止に向けた措置を講ずる。
具体的には、使用者のカスハラ対策を社内報等で改めて周知する、カスハラに至る背景事情が確認できる場合にはその改善を図る、カスハラ対策に係る研修・講習を改めて実施する。
職場におけるカスハラ対応の実効性を確保するために必要な抑止措置
カスハラのうち悪質と考えられるものについては、警察への通報を行う、警告文を発出する、商品の販売やサービスの提供を行わない、店舗等への出入りを禁止する等の対応があり得るが、使用者の対応方針を定めた上で従業員へ周知し、そのような事態が発生した場合に備え関係部門等との連携体制を整備する。
それらとともに講ずべき措置
・相談者のプライバシー保護のための措置を講じ、従業員にその旨周知する。
具体的には、相談者のプライバシー保護に係るマニュアルを定め、相談時にはそれに沿った対応を行う、相談担当者にプライバシー保護に関する研修を実施する、相談窓口では相談者のプライバシー保護のための措置を講じていることを社内報等で周知する。
・従業員がカスハラに係る相談を行ったこと等を理由として解雇等の不利益な取り扱いをされることがない旨を定め、従業員に周知・啓発する。
具体的には、就業規則等に不利益取扱いのないことを定め、従業員に周知する、社内報等にその旨を掲載し従業員に配布等する。
他の使用者の講ずる措置の実施に関する協力
使用者は自身が雇用する従業員が他の使用者が雇用する従業員に対してカスハラを行った場合、使用者は他の使用者からの協力の求めに応ずるよう努めるとともにそれに協力した従業員に対して不利益な取り扱いをすることは望ましくない。
使用者のカスハラ対策義務化の実施時期

使用者のカスハラ対策義務化の実施時期については、現状、令和8年10月1日に改正法を施行するという案が示されています。
まとめ

今回は厚生労働省が示した使用者側のカスハラ対応に関する指針の素案の内容について解説をしてきました。
今後、基本的には今回ご紹介した指針の素案に沿った指針が策定されることになろうかと思いますが、指針に変更点等があればその際にまたご紹介させていただきます。
カスハラ問題が社会的に取り沙汰される現状においては人員募集等においても差が出てくる可能性がありますので、使用者側でもカスハラ対策に力を入れて取り組む必要があるかと思います。
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