紛争の内容
今回、ご依頼者となった会社は、とある店舗内で軽度の知的障害を有する従業員を雇用していたところ、当該従業員が上司から障がい者差別やパワハラ行為を受けたとしてトラブルとなり、損害賠償請求の訴訟を提起されてしまいました。
そこで、当職らが会社側の代理人となり、当該従業員が主張するような障がい者差別やパワハラ行為はなかったと主張して、損害賠償義務の有無を争ったという事例です。
交渉・調停・訴訟等の経過
訴訟においては、上司からその従業員に対する障がい者差別行為やパワハラ行為があったのかどうかが争点とされました。
そこで、会社側の代理人である当職らにおいては、障がい者差別やパワハラ行為を行ったとされてしまった上司や会社の関係者から入念に事情を聴取し、そのような事実がないことを確認いたしました。そして、聴取した内容を基に、当該従業員の認識と上司の認識には相違があり、当時の言動や客観的な資料から、こちら側の認識が正しいと主張する書面を作成し、裁判所へ提出しました。
また、当該従業員の障がいの内容として、虚言癖があるという診断を受けていたことから、当該従業員の主張する障がい者差別やパワハラ行為は、その虚言癖によるものである可能性も指摘し、当該従業員の主張は真実ではない可能性が高いと主張いたしました。
最終的に、双方の主張が出尽くした段階で、尋問の手続きを行うこととなりました。
尋問の当日は、当職らや裁判官らから、会社の上司や当該従業員本人、及び、本件の関係者に対し、当時の認識に関して尋問をいたしました。
尋問の手続きの中では、当時の上司の認識に合理性があり、他方で、当該従業員の供述には、整合性がないことを指摘するように質問を行いました。
尋問が終了した後、尋問結果を基に、最終の主張書面を提出し、こちら側の主張が正しいということを裁判官に対して、強く主張いたしました。
本事例の結末
結局、裁判官は、こちらの主張通り、上司から当該従業員に対する障がい者差別やパワハラ行為はなかったと認定しました。
すなわち、討議従業員の損害賠償請求は認められず、こちらが勝訴するという形になりました。
本事例に学ぶこと
近年、障がい者雇用の必要性が謳われているところ、障がいを有する従業員を積極的に採用する企業が増えていると思います。当然、障がいを有することを理由とする差別やパワハラ行為は許されざるものですが、そのような行為がないにもかかわらず、差別やパワハラがあったと主張されることもあるかと思います。
そのような場合には、しっかりと障がいを有することを理由とした差別やパワハラがなかったと主張して、きちんと企業対応を行うことが求められると考えられます。従業員とのトラブルにお困りの際には、弁護士にご相談されることをおすすめいたします。
弁護士 村本 拓哉
弁護士 渡邉 千晃